冬の終わりに

朝起きて  玄関から外に出てみた
日差しも柔らかく  暖かい朝

春の匂いがした
山雀が  可愛い声を出し始めていることにも気がついた

何のことはない
新聞を取るついでに   玄関前に出たのだったが
その時
遠くの空に響く   かすかな鳴き声に気付いた

大学を卒業し  就職したての頃は
ラムサール条約で有名な
伊豆沼の付近にアパートを借りて暮らしていた

冬になると  朝な夕なに聞こえてきた声もあるが
この時期になると  また特別な声が・・・・

その断続的に発せられる独特の鳴き声は
私にとっては
まさに晩秋と初春の   いわば風物詩

あれからもう40年近く  過ぎてしまった

気仙沼暮らしになっても
やはりこの声を聞くと   郷愁を誘うのだった

すると   東に見える杉の大木の  さらにその向こうの空に
小さな   逆さのWの文字が見えた
声を出し合いながら   少しずつ近づいて来る

そう   白鳥の群れの北帰行

どんどん近付いてきて   家の頭上になった

それはWの字ではなく
逆さのV字編隊が2組
寄り添いながら   飛んで行くのだった

ふた家族なのだろうか
少しだけ灰色がかった   幼鳥らしき鳥も含めて
懸命に声を出し合い  飛んで行く
親子の愛情は  普遍だと思う

ああ  冬も終わりだな・・・

寒さは嫌いだけど   張り詰めた空気感は大好きだった

少し寂しい気持ちになる


先日11日は  母の月命日
その日   訪れた実家では
家の中までもが厳しい寒さで
広い庭には  雪もあった

「来たよ」と   いつものように玄関を入った

すると・・・
ふと母の声が聞こえたような気がした

「大丈夫  元気だよ」と
それは   母のいつもの口癖だった

帰り際   玄関を一歩出たところから
「長生きするからね」と
誰もいない家の中に向かって
私は返事をし  鍵を閉めたのだった










コメント

kaori さんのコメント…
本当に、お母様が出て来られそうな気がしますね。
声が聞こえそうな気がしますね。
私も机の上に置いている実家の写真をみると、母が父が玄関から
出てきそうな気がします。
帰ると、いつも家から出て出迎えてくれましたから。。
mistyhill さんの投稿…
kaoriさんのやさしいお気遣いに感謝します。
年齢を重ねるということの本質は、こういうところに垣間見えるものなのですね。
全ては、順繰りです。
命の蝋燭の長さ分だけ、私も精一杯生きていこうと思います。



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